春の夢 87

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 アレクセイは独り言のように呟いた。
「…ベッカーが本当に関係ないんなら、奴に応援を頼むか…」
 ところがそんな悠長なことはできなかった。
 ヒューがカーテンの隙間から外を見て、「やつらだ!!」と小声で叫んだ。
 アレクセイも窓から外を覗いてみる。
 黒いコート、黒い帽子、全身黒ずくめの大きな影が五人うろついていた。
 まさしく黒い影のごとく。
 そして影はやがて三人のいる部屋のあるビルに乗り込んできたらしい。
 アレクセイはホルスターからマグナムを抜き、ドアに向けて両手で構えた。
 五つの影はビルに入り、一つ一つドアを開けて部屋を確かめているようだった。
 三人は息を殺してその様子に耳を澄ませる。
 その部屋をノックする音が聞こえた。
 始めは軽く、次には激しく。
 住人の女性はチェーンをそのままに、ドアを開けた。
 一言二言のやりとりの後だ。
 激しくドアが開けられる音がして、ドカドカと数人の足音が入りこんできたのが聞こえた。
 そして間もなく、寝室のドアが開いた。
 しかしそこに立った男はアレクセイにマグナムを突き付けられ、後退りした。
「帰れ。俺は軍人は嫌いなんだ」


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