春の夢 90

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 同時に、廊下に這い出したヒューは影が消えているのを見て取り、ロジァの腕を掴んで走った。
「アレクセイを放って行けるかヨ!! 俺は奴の上官なんだぜ!!」
 ロジァは抗うが、ヒューはおかまいなしにロジァの腕を掴んだまま、片足を引き摺りながら走る。
 ネオンの輝きから外れた街灯だけの薄暗い路地。
 この辺りは中流の下といったところの住宅地だ。
 アレクセイは幸いにも、銃弾を何とか避けながら、ダストボックスの後に身を隠し、一人を狙い撃ちした。
 その影が倒れると、今度は別の方向から銃弾が飛んでくる。
 地面に這いつくばって、二つ目の影を狙う。
 人間の倒れる音がした。
 ビルから飛び出してきた三人目の影を狙おうとした時、彼でない何者かの銃が、その影を倒した。
 はっとしてアレクセイが顔を上げると、間もなく、幾人もの軍人が走り寄る足音が聞こえた。
 彼らは残りの影を取り囲んだ。
「包囲しました。出て来て下さい」
 アレクセイにも聞き覚えのある冷ややかな、低い声がした。
しかし影は出ては来なかった。
その代わりに、二つの骸が転がった。
「遺体の処理を頼む」
 また同じ声が聞こえた。


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