春の夢 93

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    ACT 6
 
 ヒューが意識を取り戻し、起き上がれるようになった頃、アレクセイはベッカーに呼ばれ、局長室の横にある彼の部屋にいた。
「君は何故、どこまで彼の、ロジァのことを知っているのだ?」
 ベッカーは訊ねた。
「知ってる度合いで俺の命を左右するって?」
 腕組みをしたまま、ベッカーのデスクに腰をかけたアレクセイは苦笑する。
「君がもし、S国のスパイだとしたら、即、ということもあり得ないとも言えない」
「スパイかスパイでないか、拷問でもしてみるか?」
「その必要はあるまい」
「何故?」
 それには答えず、ベッカーは続けた。
「ヒューは、以前私が『ブラック』に送り込んだ。ロジァのガードのために、一番若くてそれらしいのを選んだ。別に四六時中ロジァの監視をしているわけじゃない。ただ、『ブラック』の中のロジァにはなかなか近付けない。それに、ヒューも訓練を積んでいることと、万が一の時を除いては、ごく普通の生活をしているだけだ。ロジァが知ったら、怒り狂うだろうが」
「怒るより、人間不振に陥るぜ、普通なら…もっともあいつは充分人間不振だがな」


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