春の夢 95

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 それはアレクセイも知らなかった。
 まさか、予見したのもロジァだったとは。
「衝突する時刻や場所、速度、大気圏に入ってからの運動エネルギーの大きさなどからシュミレートされたデータを突きつけられた当時の宇宙局長官クラークは、子供の戯言とするにはあまりに精細な情報に慌てて会議を招集した」
「ガキに指摘されるまで気づかなかったってのも、オマヌケな話だよな?」
 アレクセイは茶々を入れたが、ベッカーはにこりともせず続けた。
「データによると、彗星βは30数個の破片群で、それぞれの破片がかなり巨大だった。20xx年10月の半ば約5日間に渡って地球に衝突、百万メガトン級の運動エネルギーが引き起こす現象は全地球的な破局をもたらすと推測された。急遽、パニックを避けるため国際会議が秘密裏に行われた。各国の専門の学者が集められ、即座に彗星β対策プロジェクトが結成された」
「俺もS国から参加した一人だからな」
 アレクセイは肩を竦めてみせる。
 当時彼は十五歳だった。
「無論承知している。君たち兄弟はエンジン設計に重要な役割を果たした。ところがその会議において、ロケットにセットするレーザーの誘導装置に、少年が造り出したシステムプログラムが取り上げられ、何回かの打ち上げ実験の結果、そのプログラムが起用されることになった。ロケット打ち上げは成功し、彗星βの破片の大規模なものは破壊され、地球は救われた」


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