春の夢 96

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 ベッカーはそこでしばし口を閉ざした。
「誘導装置のプログラミングを行ったのが、八才だか九才だかのガキだってことは、あっという間に俺達の耳にも入ったよ。アメリカは慌ててそのガキを隠そうとしたみたいだけどな。まあ、そのガキの心中を思ってあまりあるよな? 下手すればよってたかって大人の、いや、愛国者を名目にした連中の餌食になって、潰されたかもしれない」
 アレクセイは苛立たしさを隠そうともせず言った。
「ああ。もし子供たちの指導をしていたDr.ラファエッロがその幼い少年をかばおうとしなければ、まさしくどうなっていたかわからない。当時の宇宙局長官ヘンリー・クラークは当然、誘導装置のプログラムが他国の軍事関係者に利用されたらという危惧を持った。彼は、副長官のスターリングにトップシークレットとして、その少年科学者を隔離するよう言い渡した」
 頷きながらベッカーが語る言葉を、アレクセイは腕組みをしたままじっと聞いていた。
「ところがアメリカ空軍はその存在の重大性を察知し、その少年科学者を『Dr.C』と呼んでいたが、宇宙局に対してDr.Cのシステム及びDr.C自身を要求したのだ」
「その頃はとっくに、各国の中枢はDr.Cというそのガキの存在を知っていたよ」
 アレクセイは言った。
「まさしく後手後手だった。核兵器を搭載した敵国の爆撃機、核弾頭などに備え、アメリカ空軍は強力な防衛システムを造っている。しかし、もし空軍がそのシステムを完成させたとしても、S国、或いはそのシステムにアクセスできる国では、さらにそれを打ち砕くシステムを作り出そうとする。さらにそのシステムに対抗するためには、それを上回る頭脳を必要とするだろう。当時空軍はそれを主張した。それに対して宇宙局側は、局自体は既に軍から独立していること、あくまでも宇宙局では平和利用のためのプロジェクトのみを追求するとして、クラーク前長官、副長官のスターリング、及び幹部の科学者たちの断固とした反対意見により、空軍の要求は退けられたし、Dr.Cに関する情報漏れは最低限にとどめられたはずだ」


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