東京へ行こう -ケン- 4

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 両親は日系アメリカ人でもない、日本人だとはロウエルに聞かされていた。
 両親が生きていて、普通に育っていたら、ケンは日本人だったはずだ。
 だが、日本から来てサウスブロンクスの安アパートに住みついて一年も経っていなかったこの若い夫婦は強盗に入られ、持っていた財産をあらかた盗まれたあげく殺害された。
 泣き続ける赤ん坊と銃声に隣人が通報して警察がやってきた頃には、既に犯人は逃亡した後だった。
 この犯人は後に他の何件かの強殺で捕まったのだが、日本人夫婦のことなどたいして覚えてもおらず、赤ん坊を殺さなかっただけマシだった。
 中身だけ抜き取って捨てられた財布やパスポートなど、どこに捨てたかもわからなかったし、警察が夫妻の携帯に登録してある日本人らしい相手に連絡を試みたが、英語で話しかけても相手は切ってしまったため、失踪人の捜索願もなかったことから、捜査は犯人逮捕の時点で終了した。
 ただ、赤ん坊が施設に引き取られるところを、殺害された夫人と面識があるというロウエルが養子として引き取りたいと申し出た。
 ロウエルは夫妻の部屋の片づけや葬式を出し、人生にいくつかの岐路があるとしたら、生まれて数か月でケンはいきなり人生の岐路に立たされ、その後はアメリカ人としていきることとなった。
 両親が強殺された事実をロウエルから聞かされたのは、十五歳を過ぎた頃だった。
 誕生日はたまたま夫人が出産した病院がわかり、そこで判明した。
 だがサウスブロンクスに住む岡本夫妻の名前が父は岡本純也、母は岡本瑠美とだけしかわからず、誰もそれ以上夫妻について調べようとしなかった。
 しかしロウエルはその後、夫妻について顧問弁護士のブラッドリーに調査をさせ、夫人の実家に問い合わせをしようと試みたが、英語を理解できなかったのか、やはり相手に切られたのだと、ケンに話してくれた。
 ともあれ夫妻が何故捜索願が出ていなかったのか、その後の調査で徐々にわかってきた。
 岡本純也は東京でIT関連の仕事をし、瑠美は美大を卒業して絵を描いていたが、二人は結婚を反対され、やがて渡米、その時には夫人は身重だったようだ。


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