東京へ行こう -ケン- 55

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「本当は、弁護士のブラッドリーさんから姉と純也さんの訃報を聞いた時、すぐにでも飛んで行きたかったんです。でも父に反対されてやむなく代理人を向かわせました。代理人から姉の遺品とともに、二人に子供がいて、ロウエルという人に育てられたのだという知らせも受けました。二人がロウエルさんの手筈で丁重に墓地に埋葬されたとも………」
 真美は淡々と話を続けた。
「父はああいう人ですから、そのロウエルとかいうアメリカ人が引き取って育てたんなら、それでいいだろう、うちには関係ないとか申しまして。もともと姉を可愛がっていましたから、家を捨てて純也さんを選んだことが許せなかったのでしょうね。どこの馬の骨ともわからないやつに娘はやらない、自分が見つけた三国一の花婿に嫁がせるのだと、高校卒業する頃には婚約させていました。姉もその頃は付き合っている人もいなかったし、卒業したら結婚するという条件で東京の大学に進学したんですが…」
「純也さんに会ったわけね」
 千恵美が言葉を挟む。
「大学時代から付き合い始めて卒業すると純也さんも一緒にうちに来てくださったんですが、父は純也さんだけ追い返して、姉を部屋に閉じ込めたんです。でも姉は部屋から抜け出して東京に戻ってしまいましたの。私はこっそり夜中に手伝わされて、姉の味方のつもりだったんですよ。見た目は華奢な姉でしたが、頑固一徹は父親の血を引いてましたわ」
 その頃を思い出したのか、真美は寂しそうに笑った。
「それから父は岡本さんのお宅に怒鳴り込んだり、手を尽くして探しましたけど、二人はどこかに隠れてしまって、でもまさか、アメリカに渡っていたなんて思いもよりませんでした」
「両親は、真美さんにも連絡をしていなかったんですか?」
 ケンは尋ねた。
「ええ、メールとか携帯でたまにやり取りをしていたので、赤ちゃんができたことも生まれたことも私だけは知っていました。でも居場所は教えてくれなかったんです。それから、音信不通になってしまって……ただ、連絡が途絶える前、会わなくてはならない人がいるからと……それが最後でした」
 真美は零れ落ちる涙をハンカチで拭った。


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