西高東低27

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 「ワンちゃん猫ちゃんとご一緒に カフェ・リリィ」は、夜の常連客の他にバレンタインデーのひと時をカフェで過ごそうというカップルでいっぱいだった。
 だが、いつものソファの辺りはリザーブドのプレートがテーブルに置かれていて、佑人がドアをくぐると、まだ力はいなかったが、練がすぐそこへ案内してくれた。
「でも、大丈夫? 予約のお客さんいるんでしょ?」
「だから、成瀬くん」
「え?」
「力の予約」
 コートを受け取りながら練がこそっと佑人に囁いた。
 そんなささやかな配慮が佑人の心を舞い上がらせるが、周りを見回すと、カフェのバレンタインデーメニューを堪能しながら微笑みあうカップルばかりで、一応制服は着替えてきたものの、何だか自分が場違いのような気分になってくる。
「すみません、ミルクティをお願いします」
「了解」
 出かけてくる、と家を出る時、「お、ついにバレンタインデートか?!」などと郁磨にからかわれた佑人は一瞬、戸惑った。
 事実ではあったけど、多分郁磨が想像するような相手ではない。
「友達の合格祝いだよ、力とか、……東山とか」
 とってつけた東山には、心の中で詫びを入れた。
 それに力へのプレゼントは持ってきたものの、どちらかというと合格祝いに重きを置いている。
 八時の約束まであと十分あった。
 ドアが開いて力かと振り返ると、「よう!」と声をかけてきたのは坂本で、後ろから東山が続いて入ってきた。
「お、成瀬! 何、まさか彼女と待ち合わせとか?」
「え、いや、彼女じゃない、力とだけど……」
 当然のように坂本は佑人の隣に陣取り、東山はその向かいに腰を下ろす。
「マックでうだついて、ファミレスで飯食って、合格祝いの締めにここ」
 坂本が軽く説明する。


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