ひまわり 1

next  top  Novels


   Act 1

 入道雲がむくむく、むくむく、空一面にのさばり始め、蝉の鳴声が一段とトーンをあげた。
 山間の街に訪れる夏は一気に駆け抜けていく。
 夏の生きものたちはここぞとばかりに短い季節を謳歌する。
「一雨きそうだな」
 江川優作は空を見上げて呟く。
 目当ての店は土産物屋が連なる古い軒並みを歩いた通りの端にある。
 観光地として有名なこの街は、今日も旅行者があちこちに固まりながら漫ろ歩いている。
 優作はこの街を訪れるのはもう何度目かになる。
 それほどこの街に感じるものがあるというわけではなく、単に友達がいるからというだけのことだ。
 
 
 
 
 伽藍という看板がようやく見えてくると、優作はほっとする。
 さすがに日中の日差しは強い。
 ドアを押して中を覗くと、うわ、と思わず口にしそうになるほど、人で一杯だった。
 夏の観光シーズンとはいえ、店の許容量を越えているのではないか。
 壁ぎわに陣取っている女の子のグループは六人掛けのテーブルなのに無理遣り八人はいそうだ。
「元気ぃ、ブルーベリーのアイス、四個追加ぁ」
 その八人のうちの一番派手そうな女の子が手を挙げて言った。
 もっとも、どの子も頭の天辺から足の先まで、カラフルこの上ない。
「ラジャ」
 横柄な注文にも嫌な顔をするでもなく応じる、カウンターの中で長髪を後ろで結わえた若い男。
 相変わらずだな。


next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ