ひまわり 2

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 優作は苦笑しながら出直そうとしたが、「優作さん、いらっしゃい」とトレーを抱えて忙しく店内を飛び回っている女の子に声をかけられた。
 カウンターの中からも、「おう、優作か、入れよ」と笑顔を向けられる。
 優作の学生時代の仲間で、今でもちょくちょく会っている数少ない友人、岡本元気だ。
 学生時代からバンドを組み、ギタリストとしてその世界ではちょっとカリスマ的存在で、ルックスも手伝ってかなり人気があった。
 彼が抜けたそのロックグループ『GENKI』はメジャーデビューするなり超人気バンドに伸し上がった。
 未だに当時のオリジナルメンバーだった元気を知っているファンは、田舎に引っ込んで喫茶店のマスターに落ち着いている元気を訪ねてくるらしい。
 彼女たちもそのクチか。
「けど、いっぱいだし、またあとで寄るよ」
「まあまあ。ここの端っこ、今空けるから」
 元気が示したカウンターの端の椅子には、いつも小型のテディベアが座っている。
「はい、どうぞ」
 テディベアを抱きあげたアルバイトの紀子とも既に顔見知りだ。
 近くの造り酒屋の一人娘だが、自分の店よりも元気の店を手伝う方が好きらしい。
「どうしたんだよ、急に。今度は俺に何をコーチしろって?」
 優作が椅子に座ると、元気がにやにや笑いながらそう言った。
「からかうなよ」
 優作はちょっと伸びすぎたかな、と思う柔らかい前髪をかきあげる。
 去年の年末にも優作はスキーのコーチとして元気に世話になっていた。
 女の子と一緒に行くスキーツアーで恥をかかないようにしたい、と頼み込んだのだ。
 スキー場が目と鼻の先という場所柄、幼い頃からスキーに親しんでいる元気はインターハイも出場しているし、インストラクターとしてもかなりの腕だ。


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