ひまわり 27

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 大きな男が情けない顔をする。
「かっ飛んできたわけやね。山道を」
「冗談じゃなくてさ…そこ通してくれないか」
 元気は将清の前に立ちはだかったまま、ドアをノックした。
「キスしてくれたら」
 怪しい光を見せて元気の目が将清を見上げ、将清の首に元気の腕が絡む。
「お前、酔ってんな?」
「元気、まだ、そこにい…」
 ちょうどドアを開けた優作は、元気の唇が将清に重なるのを見た途端、またドアを閉めようとして、すかさず将清に足を突っ込まれる。
 将清は、すごい勢いで元気を離すと、ドアの向こうに無理やり身体をねじ込んだ。
「どうして元気と…俺は、俺はお前のことずっと好きだったのに…ずるいよ、お前…」
 優作が喚く。
「優作、違う、俺は…」
 バン! と元気はドアを閉めた。
「やってらんないね。ご近所迷惑って言葉を知らないのか。ったくどいつもこいつも! バカップルめ!! どうせ俺は狂言回しだよ」
 元気は忌ま忌ましげに呟く。
「こんなおとぎ話な終結があっていいわけがない。いばら姫だって、王子様と結婚してからがいばらの道だったんだからな」
 エレベーターに乗り込んでからも、あほらしさが収まらない元気だった。
 
 
 
 
 
 入道雲からうろこ雲へ、形を変えたさわやかな秋空がすがすがしい。
 秋祭りも近いようだ。
 朝、伽藍に寄ったら、元気はいつもの穏やかな笑顔で向かえてくれた。
 これで終わったわけじゃないけれど。
 優作は運転席に座る将清を横目に見る。
 
『100年後には、フツウかフツウじゃないかなんて関係ない』
 
 酔っててうろ覚えだったが、元気のそんな言葉が快い重みをもって優作の心の中に残った。
 
                             ― おわり ― 
 


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