お正月1

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 年が明け三が日も過ぎると、からりとした晴天が続き、伽藍の店内も心なしか空気が柔らかくなっている。
「おっはよー、元気」
「おう、なんかいいことでもあったか?」
 るんるんで入ってきた紀子にすかさず、元気が聞いた。
「わっかるぅ? ふふ、今度の週末、スキー行くんだ。S高原スキー場。もち温泉込みで、克典と」
 克典と、を最後につけくわえると、紀子はエプロンをかけ、「だから、金曜日、お休みさせて?」と、小首を傾げて元気の顔を覗き込む。
「ダメって言っても、行くんだろ」
 どうやら紀子と克典は元のさやに戻ったらしい。
「あら、だって金曜日辺り、豪さん、来るんじゃない? どうせなら、お休みにしちゃえば?」
 紀子の切り返しに、このところ元気もたじたじだ。
 しかも最近、優花と紀子はよくメールのやり取りをしているらしい。
「元気もスマホとは言わないけど、せめてガラケーくらい持ったら? 今ドキ、仕事先に電話するしか恋人の声も聴けないなんて、豪さんが可哀想じゃない」
 参ったなー
 東から清岳館での顛末を聞かされた時には、元気はため息しか出てこなかった。
 住む世界が違っても、遠く離れていても、豪が意気揚々と世界中を飛び回っていることが、内心元気は嬉しくて仕方がない。
 そう、またいつか豪が街にやってくるのはわかっているからだ。
 既に、仕事があるというのに大みそかに来てとんぼ返りし、ホテルもスイートしか空いてないというのにまた一日にやってきて、三が日は近くの神社に初もうでに行ったりスキーに行ったりして帰っていった。
 当然、元気はその度に振り回された。
 第一、 寝る前には必ず電話をしてくるのにだ。
 元気がくだらないことを考えていたその日の午後、「ただいま」と、客の少ない午後を狙ってではあるが、臆面もなく言ってのけて、にかにかと笑いながら豪が店に入ってきた。
「お前、ちゃんと仕事してるのか? こんなに頻繁に来て、スケジュールとか大丈夫なのか?」
 眉を顰めて心配する元気に、「ぜーんぜん、平気」と豪は飄々としたものだ。
「もう、金曜日までも待てないんだからー」
 ボソッと言って、紀子が肩を竦める。
 そういえば、と、元気は聞き忘れていたことを思い出した。
「豪、お前、大学ちゃんと卒業したのか?」
「今更何言ってんだよ。とっくにきっちり卒業したし。それより、俺、ついこないだ、T市の住民になったから」
「え? どういうことだ?」
「何よ、それ?」


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