お正月2

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 爆弾発言に、意味が理解しがたく、元気と紀子は一緒になって豪に詰め寄る。
「だから、家、買ったんだ、K町に」
 K町は市街から車で十分ほどにある静かな農村地域だ。
「うそっ、やるじゃん、豪さん!」
「バカか、お前!」
 元気は唖然とする。
「バカかじゃないだろ? これで心置きなく元気と会えるじゃん。俺、もともと田舎暮らし、したくて探してたんだよ、いい物件ないかって。自然の中でたくさん撮りたいものあるし。農家だったんだけど、そこのばあちゃん、名古屋に住む息子頼って行くって話でさ」
 切々と語る豪を見ていると、元気は何だか目頭が熱くなって顔を逸らす。
「呆れたヤロウだ」
「元気がここで待っててくれるなら、帰れば元気に会えるって思って、仕事、じゃんじゃんがんばっちまう」
 豪はお気楽そうな笑顔を振りまいた。
「勝手なことをぬかせ」
「だって、ほら、よく言うじゃん、『亭主元気で留守がいい』って」
「つまらないゴタクを抜かしてると叩き出すぞ!」
 ペシッと元気の手が豪の頭に飛んだ。
「ってー、暴力反対!」
「当然の報いだ!」
 再び元気の手は豪の頭を叩く。
 叩きながら俄かに頭が沸騰しそうになっている自分が、元気は許せない。
 どう考えても、豪がこの街に現れて以来、元気の調子は狂いっぱなしだ。
「ほーい、ちわっす」
「あ、どもー」
 豪は、日課のコーヒーブレイクに入ってきた東に、愛想よく声をかける。
 東は、おう、と返してカウンターの定位置に座るが、うつむき加減で、幾分顔が赤い。
「仲がよろしくていいんだがな、ノーマルとかそうでないとか誰が何て言ったって、んなこたどうでもいいさ、この際! 俺はよき理解者でありたいが」
「おい、東?」
 ぶつぶつ言い始めた東を、怪訝な顔で元気は見つめる。
「あんまり、のびのびといちゃつかれると、周りがたまんないってことよ。あー、あほらし」
 いつの間にか椅子に座り込んで、頬杖をついている紀子が東を代弁する。
「せめて、外に聞こえないくらいの声で頼むわ」
 思わず元気は天を仰ぐ。
「は、はは、あ、もう四時だ! あ、俺、業者と家の修理の打ち合わせとかあるんで、また後で寄る。んじゃ!」
 収拾がつかなくなったこの場をどうしてくれるんだ、と顔をひきつらせる元気の心も知らず、さほど実は気にもしていない豪は店を飛び出していく。
 やれやれ、と思ったのもつかの間、またドアが開いた。
「言い忘れた、俺、週末までオフだから、元気、今夜からずっと一緒にいられるぜ」
 またぞろ顔から火を噴きそうなことを平気でぬかす豪に、元気が怒鳴りつける。
「いいからさっさと行け! このアホウがっ!」

おわり


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