雪の街10

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「うちもここ数年仕事が落ち込んで、オヤジも兄貴も結構きついってよ」
 清隆もそうもらしていた。
 清隆の家は町でも昔から手広く仕事をこなしていた土建屋で、今は清隆の兄が社長として頑張っているようだ。
「にしても、すんげーな、雪」
 油断すると硬く凍りついた雪に足を取られそうになりながら、歩道横に積まれた雪を横目で見やった。
 町の中心を走る通りは輪達になり、走るというより動くといった有様でがたがたと車が通り過ぎる。
 商店街の歩道に流れるクリスマスソングや飾り付けられたショーウインドウが、それでも少しばかり気分を和ませてくれる。
 しばらく歩いて三之町の通りに曲がると、この雪にもかかわらず観光客がちらほら歩いている。
「物好きな連中……」
 俺もその物好きな連中の一人か。
 自分で突っ込みを入れながら、目を上げるとようやく目当ての看板が見えてきた。
 ふーっと息をつくと、朔也は『伽藍』とある看板の傍のドアを開けた。
 
 
 
 
 店内には予想以上のざわめきがあり、朔也は曇ったメガネで見渡すが、空いているのはカウンターの隅の席くらいだった。
 レジの横のスペースにはクリスマスツリーが飾られ、店内にはいつものバッハではなく、ジャズにアレンジされたクリスマス曲が流れていた。
「いらっしゃい。あれ、早かったんですね」
 ドア口で突っ立っている朔也に気づいて、長い髪を後ろで結わえた青年がにっこりと声をかけてきた。
「おう……なんか、混んでるな」
「どうぞ、こっちへ。あ、コート預かります」
 元気は朔也をカウンターの奥の席へ促した。
 岡本元気、この店のれっきとしたオーナーである。


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