雪の街11

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 昨今の茶髪に反発するかのように、ストレートの黒髪は男にしてはもったいないくらいきれいだ。
 きれいだと言われることの多い朔也だが、それは違う人種の血が混じっているからで、朔也からすれば元気の端正な顔は中性的で美しいと思うし、しかも艶めいて人を魅了する。
 カウンターの中に入った元気は、いくつかのオーダーをまとめて、だが優雅にこなしていく。
「おい、今日も一人なのか? バイトは?」
「ああ、紀子ちゃん、夕方からきてくれることになってんですけどね」
 のんきそうに元気は言うが、店内は一杯で、さらにドアが開いて、客が顔をのぞかせる。
「申し訳ありません、ただ今満席になっておりますので」
 元気は丁寧にわびの言葉をかける。
 朔也は黙ってカウンターの中に入っていった。
「これ、どのテーブルだ?」
「え、また、いいですよ」
「借りるぜ」
 壁に引っ掛けてあるエプロンを取ると、朔也は手早くつけて、トレーにいれたばかりのコーヒーを載せる。
「すみません、これとこれ、右の奥です」
「よっしゃ」
 どうやらこの店にくると、朔也はにわかウエイターをやる運命にあるらしい。
 バイトの紀子にまだ出くわしたことがないのだ。
「次、どこだ?」
「真ん中の丸テーブルです。なんか、昼過ぎから急に混んできちゃって」
「この大雪の日に、よく出歩くよな」
 ほとんどが観光客だ。
 土産物の袋を抱えているからすぐわかる。
「ホイ、オーダー追加。カフェオレ一つ」
 戻る時、隣のテーブルから呼び止められた朔也は、卒なくオーダーを聞いて元気に告げた。
「今夜はパーティなんで、四時には一旦店じまいするんですけど。そだ、お腹すいてません?」
「列車の中で食ってきた。………にしても雪、まだ降る気か?」
 窓の方を見やって、朔也はふうと息をつく。


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