雪の街12

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「ここ二日ほど降り続いてますよ。先週あたりまで雪なんて全然なかったのに。参りますよ」
「雪よけかぁ」
「そう。よけてもよけても積もってくれちゃって」
 客の出入りが一段落すると、「どうぞ」と元気は朔也にストレートのモカをいれてくれる。
「おや、元ちゃん、新しいバイトさん?」
 入ってきたのは商店街の奥様三人組だ。
 時計屋のおかみさんがテーブルに落ち着く前に元気に声をかけた。
「臨時です。いらっしゃいませ」
 トレーに水をのせ、メニューを持って朔也は早速テーブルに向う。
「えっと、『今日のブレンド』にしようかな……」
「あたし、カフェオレ」
「ブレンドにするわ。あれ、あなた、あの人に似てない? ほら、何だっけ」
 巨体を揺らす一人の奥様が朔也に気づいて指を頬に当てて考え込んだ。
「ああ、そう、私も思ってたのよ、ほら、俳優で、何かのCMに出てる……」
「そう、あれ、あのドラマで、弁護士の役やってた」
「えっと、川口………」
「そうそう! 川口朔也!」
 かしましくも逞しげな三人の婦人たちに口々に捲し立てられ、朔也はいささか閉口する。
「はは、そうっすか? えっと、ブレンド二つとカフェオレですね、以上でよろしいですか?」
 オーダーを繰り返してごまかして切り抜け、カウンターに戻ると元気がちょっと笑う。
「朔也さん、なんか、ちょっと大人になった?」
「お前、俺を相当バカにしてるな?」
「滅相もない」
 そう言いながらまた元気は微笑んだ。
「そだ、スキー買うのつきあえよな」
「え、こっちで揃えるんですか?」

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