雪の街13

back next  top  Novels


「本気で雪かきしなけりゃだな」
「ですねー。ライブの前にドアの前だけでもやらなけりゃ」
 客がまばらになったところで、朔也は元気と並んでカウンターの中の椅子に腰掛けた。
 ランプ型のストーブの火は暖かそうに燃えて、人の心もほっとさせる。
「そうだ、ライブ。お前、バンドやってたって? 仕事で『GENKI』の連中と一緒になった時、やつらに聞いたんだよ。そんなことちっとも言わなかったじゃんかよ」
 朔也は傍らに置いてあったギターケースを見て思い出した。
「あいつらに会ったんだ? ハハ、世間は狭いね。今夜、やるからみてくださいよ。年に一度の『昇り竜』ライブ」
「『昇り竜』ぅ? また、お前、だっせー、ドラゴンズとか言うんだろ」
「わかりました?」
「わからねーわけねーだろ。そんで、お前、ギターなの?」
「ええ。あと、ボーカルとベースが『あさくら』の若旦那、ドラムスが『丸一』の秀喜」
「『あさくら』? 朝倉正道?」
「あ、ひょっとして学年同じ?」
「三年の時、クラス一緒だった」
 懐かしい名前を聞いて、朔也は自然笑みが浮かぶ。
 ひょうきんなやつで、清隆ともよくつるんでいた。
「ごめーん、元気、遅くなってぇ」
「紀ちゃん、三十分の遅刻」
 慌しく入ってきた女の子は、コートを脱ぎながらカウンターに入っていく。
 柱時計はそろそろ四時になろうとしていた。
「あ、このコがうちの貴重な唯一のバイトの紀子ちゃん。そこの『石井酒造』の跡取り」
 元気は紀子を朔也に紹介した。
「もう、跡取りってのやめて!」
「本とのことでしょうが」
「え、どっかで会いましたっけ?」
 紀子が朔也の顔を覗き込んだ。
「出会い頭にナンパはないだろ?」
「やめてよ、元気!」


back next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ