雪の街15

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「顔を出さないわけにはいかないだろうけどな」
 今年はこともあろうに、『GENKI』は、大晦日に、こんな田舎の市民ホールでライブをやったあと、NHKの紅白にそのままライブで出演するのだという。
 そのため市の職員までもおおわらわらしい。
「元気、一緒にやんないの?」
「バカいうんじゃありません」
「そっかー、彼氏が怒るもんねー、モトカレとより戻すんじゃないかって」
「紀ちゃん」
 ジロと睨むと、紀子はわるびれもせず、へへ、と舌を出してみせる。
「でも、一平も豪さんもカッコいいしさー。いいよなー、あんなカッコいい元彼と彼がいてさ、元気ってば。ね、どうせなら、どっちかなんてもったいないから、両方とも彼氏にしちゃえば?」
「はいはい、勝手なこと言ってなさい」
 隠そうなどとは露ほども思わずに元気にアプローチしてきた、『GENKI』のボーカル鈴木一平とカメラマンの坂之上豪のお陰で、しかも豪を追ってやってきた元彼女、優花とは意気投合したらしく、すっかり紀子は事情通になり、時々元気を困らせる。
 と、その時、紀子の近くからディズニーの「It‘s a small world」が聞こえてきた。
「あれ、携帯? 鳴ってるよぉ、誰の?」
「ああ、俺」
 朔也はカウンターの中に置いていたコートのポケットから、携帯を取り出した。
「おう、何? え? 今、元気んとこ」
 相手は清隆だった。
「今から来るって? お前、仕事……、え、……峠? お前、それ無謀じゃん! すんげー雪だぞ」
 大きな声を出したので、みんなが一斉に朔也を注目する。
「ああ、わかった。とにかく、ゆっくり、ゆっくりでいいからな。気をつけろ、わかったな?」
 携帯を切ると、朔也は難しい顔をして舌打ちする。
「松田さん? 車で来るの? ひょっとして」
 元気が聞いた。
「ったく、あのバカ」
 何もわざわざ来なくていいのに。


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