雪の街19

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 朔也がいやだとごねまくっているので、その時限りだが。
 ったく、世の中狭いぜ。
「あれ、坂之上豪だろ? カメラマンの」
 テーブルの上にトレーを置き、グラスを並べていた紀子に、朔也はボソ、と聞いてみた。
「そう! よく知ってるじゃん」
「すげー人気らしいからな。その人気カメラマンが何でこんなとこにいる?」
 紀子はふっふっふ、と笑う。
「彼、越してきたのよ、この町に」
「ああ? また何でこんなど田舎に? 仕事は向こうだろ?」
 意外な答えに朔也は納得がいかない。
「見ててわからなけりゃ、あなた、相当鈍いわよ」
 ひそひそ声で紀子は言い切った。
「カウンターの写真集、見てみたら?」
「ああ?」
 朔也はカウンターを振り返る。
 と、そこには元気の傍にぴったり寄り添う豪の姿がある。
「マジかよー」
 豪の目の中からは今にもハートが飛び出しそうだった。
 じっと元気を、いや元気だけを見つめている。
「どういうつながりだ? あいつら」
 思わずまた紀子に聞いてみる。
「それがさー、三角、いや四角関係ってとこ? 一平なんか女がいろいろいるみたいなのに、元気に超熱視線!」
「はあ?」
 朔也は眉間に皺を寄せる。
「元気に言い寄ってくんの、女の子だけじゃないもんねー、昔っから」
 まあ、それはわかる気もする。
 元気って時々、どきっとするほど色っぽいもんな。
 普段、渋いこといってるくせに。
 きっと囚われたら離れられなくなるタイプというやつだな。
 妙に納得しつつ、朔也は再び元気を振り返る。
 それで「GENKI」のメンバーが話していた意味がわかった。
 元気に会いたいがために、わざわざこんなど田舎でライブをやるわけだ。
 しかし、あの無愛想な男がねー、元気にねー。


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