雪の街2

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 最近『GENKI』は、契約が切れたところで前事務所から独立し、一時自分たちのレーベルを作ったことで話題になったが、その取締役社長には大学時代から彼らの音楽活動を手伝っていた浅野涼子を据えた。
 独立の計画は一年前程から古田と浅野とで準備してきたもので、知り合いの代理店や企業などからバックアップを取り付け、前事務所では縛りがきつくてできなかった企画を次々に実行に移し、ここ数か月のうちにじわじわとその効果が表れ始めている。
 表だって動くのは浅野だが、実際は古田がバックで動かしているというのは仲間うちのみが知るところだ。
 今回のCFプロジェクトは、これから彼らが高みを目指すためにも大きな起爆剤となるはずだった。
「未だに、人ごみとか、ごちゃついてるとこ、嫌いなんだよな、お前も元気も」
 古田は一平を見てふうと息を吐く。
「元気さんっていや、一平さん、マジ、元気さんの店、強襲する気?」
「やる気だな。そのために、一平のやつ、あの町でライブ決めたんだぞ、マサ。ライブのついでじゃなく、ライブがついでなんだ」
 古田の言葉は静かだが断言的だ。
「何か、すっげー寒いって聞いたぜ。ど田舎なんだろ? 山ん中の、雪が一メートルとか二メートルとか」
 ギター担当のタダシが情けない声を上げる。
「げーーー、俺、やだよぉ、んなとこでライブやって、人が集まるのかよ~」
 メンバーの話を小耳に挟んだ朔也は、元気の店、という言葉に引っかかった。
 とっととホテルを出ようと思っていた朔也だが、ふいとメンバーを振り返り、つかつかと近づいていく。
「元気の店、って、もしかして、『伽藍』のことか?」
 男でも思わずはっとするような美貌の主にいきなり問われて、『GENKI』のメンバーは一瞬面食らったようだ。
 しかも、一平がサングラスの奥で睨んでいるのが朔也にもわかる。
「ご存知なんですか?」
 古田が一呼吸おいて問い返した。


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