雪の街21

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 テレビを見る人間なら、CMやドラマなどで朔也の顔はインプットされているのだろう。
 そう聞いてくるのも無理はない。
「へえ、あの絵、あんたが描いたのか? いいじゃん」
 店内の絵を描いた作者だと知ると、朔也は言った。
 しばし二人はイタリアの画家の話で盛り上がる。
 ハプニングはそんな時、やってきた。
 ドアが開いて、数人が入ってきたので雪と一緒に冷たい風が店に吹き込んでくる。
「あ、会費、お一人三千円でぇす!」
 一瞬、ぽけっとしていた紀子が、慌てて入ってきた面々に呼びかけた。
 最後にぬっと現れた黒ずくめの男は、一斉にみんなの目を引いた。
「おい、こいつらって……」
「まさか、『GENKI』………?!」
 誰からともなく、ささやきが聞こえてくる。
「またかよ、おい、豪、ここって、東京とかのスタジオじゃねーんだぞ。かた田舎の茶店にしちゃ、業界人間の人口密度、濃すぎるぜ」
 東が呟くように言った。
「じゃ、みんなの分まとめて、一万五千円プラス迷惑料ってことで、とりあえず二万円ね」
「わあ、ありがとう、さすが、みっちゃん!」
 超人気芸能人からもしっかり会費を取っている紀子は、みっちゃんに特別の笑顔をサービスする。
 ステージ、といっても狭い店内のことだ、一平たち、いや『GENKI』みんなが入ってきたことは、演奏している元気にもはっきりわかって、ちょっと眉をひそめた。
 また、五人、そろってかよ。
 焦ったのは、『昇り竜』の元気を除いた面々だ。
「おい、元気、やつらの前で、やれってか?」
「びびんなくてもいいよ、若旦那。やつらなんか気にせずに」
「お、おう!」
 といったところで、曲の最後で声がひっくり返ったとしても無理からぬことである。
 サングラスの奥からじっと一平に睨みつけられているのだ。
「夜なのにサングラスなんかかけやがって………じゃあ、ラストってことで、『White Christmas』!」


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