雪の街4

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「だから、ライブはついでで、一平は元気に会いたいだけなんっすよ」
「ふーん」
「朔也、スタジオ、間に合わなくなるぞ」
西本が呼んだ。
「じゃ、まあ、がんばれや」
「はあ、どうも」
人の良さそうなみっちゃんが、にっこり笑った。

「彼らもT市入りするらしいな、年末に」
スタジオに向う車の中で、西本が言った。
「頼むから、向こうで彼らと悶着起こさないでくれよ」
「何で、やつらと悶着だよ」
ぶすくれて朔也は言い返す。
「あの、一平って、何だか朔也のことを敵対視してたじゃないか」
「知るかよ、そんなの」
「オフだからって羽目を外しすぎるな。映画決まったばっかで大事な時なんだからな」
 ハンドルを切りながら、西本は念を押した。
「わぁかってるって」
「俺が行ければいいんだが……」
「冗談言うな! 真由美ちゃんとディズニーランド、楽しいオフが待ってるじゃん、あんたには」
 朔也はすかさず抗議した。
 オフまで西本にべったり張り付いていられてたまるかよ。
いつも仕事第一で、なかなか家族サービスできない西本が、今度こそ、と妻子に約束させられたディズニーランドだ。
それもこれも、心配性の西本は朔也から目を離せないでいる、ということが一番の理由なのだが。
「そうなんだけどな…。とにかくこうなったら、松田くんにお目付け役を頼むしかないな」
「なーんで、タカがお目付けだよ! それこそ冗談じゃねーぞ!」
年が明けて二週目から、朔也が主演予定の映画がクランクインする。
著名なハードボイルド作家の小説が原作だが、かなりダークな内容で、世の中の裏側で生きる捻くれた主人公が堕ちていく中で、盲目の少女の純粋な心と出会い、傷つけながらも愛し合う。
この作品は朔也の今後を決めるターニングポイントとも評されているだけに、西本もいつも以上に気合が入っているのだ。


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