雪の街5

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「しかし、年末から松田くんのうちに泊めていただくんだろ?」
「てめーら、俺に隠れてこそこそ、連絡とりあってんじゃねー」
 秋ごろ、元気に電話をした時、スキーがしたい、と言い出したのは朔也だ。
 それなら、イブの頃こちらにきませんか? パーティやるんですよ。
 元気の言葉で、年末年始の予定を決めてしまい、西本にスケジュール調整させた。
 そのお陰で、西本も久しぶりの家族孝行ができることになったのだが。
「年末にTに行く?」
 それを聞いて焦ったのは西本の言う松田くんこと松田清隆だ。
 建築設計事務所で働く松田は、一応サラリーマンであり、仕事納めは二十六日になる。
「せっかくイブは俺がローストビーフを作ってやろうと準備万端整えてたんだぞ!」
「作ればいいじゃん」
「お前がいないのに作ってどうすんだよ!」
 今つきあってるやついるんだけど、松田清隆ってやつ。
 高校の同級生だった清隆と近年再会し、互いの思いを確かめ合った朔也は、西本にだけ、そう伝えた。
 仰天したものの、真剣だから、という朔也の言葉より、実際清隆に会ってどうやら本物らしいと西本も諦めた。
 別に俺はかまわないけど、なんていう朔也に、あとせめて十年は絶対にマスコミに嗅ぎつけられないようにしろという条件付きで。
 だがそれからというもの、とっかえひっかえ女を泣かせていた朔也の生活態度は一変し、噂はまだ山ほどあったが、実際は清隆だけ、という状況は、西本には信じ難いところだった。
 しかも、朔也の演技にも重厚さが増して評価され、仕事も充実している。
 こうなったら、とばかり、西本はいざとなると清隆を頼りにするようになったわけだ。
「正月なんかにうちに帰りたかねーんだけどなー」
 電話の向こうで清隆が唸っていた。
「お前は別にこっちにいればいいじゃん」
「そうはいくか!」
 せっかく朔也のオフなのに、ずっと一緒にいられるってのに、と、それから、一計を案じた清隆は、勝手に年末から正月にかけて、自分の家に朔也を連れて行く手はずを整えてしまった。


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