桜の頃 3

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 裏のグラウンド、古い桜の木。
 
 そう、あれはいつだったろう、高校に入って研二も千雪もそれぞれ柔道部と剣道部に在籍し、ようやく落ち着いてきた頃のことだったか、二人は小雨の降る中、あの桜の木の下で何を見るともなく、糸のように落ちてくる雨粒を見ていた。
 三年の部長の自分に対する扱きが理不尽だと、千雪が腹をたてているのを、研二がなだめてくれた、そんなことだったと思う。
 暴力ではないし、ただ居残り掃除や使いっ走りくらいのものだが、それが頻繁にあからさまに千雪に与えられれば、誰もが理不尽だと感じていたはずだ。
 部長の命令は絶対だったし、引退する夏までのことだったのだが。
「研二!」
 千雪が呼ぶと、桜の木の下にたたずんで上を見上げていた研二が振り返った。
「何や、どないした?」
 研二も全国大会出場経験のある有段者だ。
 大柄だが引き締まった体躯をしているので重量級ではない。
 寡黙を絵に描いたような男で、よく見ると非常に端正な面構えなのだが、目つきの鋭さがわざわいして女の子が近寄りがたい雰囲気を作っている。
「探してんで、教室にもいないし」
「式終わったら、うちくるやろ? 三田村とか安藤とかみんなくるし」
「そんなん、帰ってからでもすぐそこやのに」
「ちゃうわ、写真撮ろう思て、父さんからカメラ借りてきたんや」
 研二は微笑んだ。
 そう、こんな優しい研二なのに、みんなが、研二は笑わない、怖い、などと言う。
 幼馴染みの自分や江美子、菊子以外には人見知りなのか、とまともに千雪は聞いたことがある。
 そしたら研二は声を上げて笑った。
「そこ、立って。順番に撮ろう」
「ここか?」


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