花のふる日は 108

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   ACT 11
 
 
 遠くで何か音がしていた。
 何だろうと漠然と思いつつ、一度は無視する。
 だがその音は次第に不快なものとなり、ついに千雪は目を覚まし、その音の原因が机の上でコール音とともに自身が微妙に振動するために机にぶつかり、さらに不快な音を醸し出している携帯だということに気づかされた。
 ムクリと起き上がり、半分まだ死んでいる脳をそのままに、仕方なくしつこい音のハーモニーを止めた。
「……はい…」
 目を閉じたまま、かろうじてそれだけ口にした。
「今、どこだ? 午後にでも乃木坂に来られるか?」
「え……と、どちらさん?」
「工藤だ。いい加減目を覚ませ! すぐに昼だぞ」
 思わず携帯を耳から離す。
「今日は確か日曜や思いますけど」
「だからどうした? 映画のキャスティング、確認してもらわねばならない」
 この人、基本的にワーカホリックな日本のオヤジなんや。
 ぼんやり、そんなことを考える。
「えーと、午後いうても、正午から午前零時までありますが………」
「だから、さっさと時間を決めろ!」
 怒鳴り声にまた携帯を離す。
「えーーと、ほな、夕方五時あたりで……」
「五時だな? わかった」
 途端、ブチッと切れる。
 千雪は思わずふううと大きく溜息をつく。
 少しずつ頭も起きだしてきて、フラフラとキッチンに行くと、テーブルの上にサンドイッチが置いてある。
 もちろん、手作りのそれは、京助の特製だ。
 ラップを外して一つつまんだのだが、よく噛まずに飲み込んだために喉につかえそうになり、慌てて冷蔵庫から牛乳を出してカップに注いで飲んだ。
 東京に戻ってきたのは昨夜の九時頃だったか。


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