花のふる日は 11

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 千雪もあまりこだわる方ではないものの、高校までの部活でなら上級生を呼び捨てはなかっただろう。
 京助は全くそんなつまらないことにこだわる男ではなかった。
 だから、彼女のことも京助にとってはたいしたことではないのかもしれないが。
 友人として、京助は大切な存在だと思う。
 だからもし、ただの友人同士だったなら、こんな面倒なことにはなっていないのだろう。
 こんなイライラも胸の奥のどうしようもない苦い感情も、もうゴメンや。
 千雪は心の中で呟いた。
 ふいに湧き上がるそんな感情を持て余し、何も手につかなくなる。
 
 欲しいのは優しい眼差し……
 欲しいのは……俺に差し伸べられる手……
 俺だけに………
 
『そらあれだけの男や、一人に絞れ、いう方が無理いうもんやな~』
 
 佐久間のいうことが千雪もようやくわかった気がする。
 けど、それを理解して付き合っていけるほど俺は寛容にはなれへん。
「千雪……!」
 業を煮やした京助は千雪を振り向かせ、強引にキスした。
「何考えてんや! こんなとこで! 離せ!」
 千雪はそんな京助の腕を押し戻す。
「………やから、お前を必要なんは俺やのうて彼女やろ? 彼女を大切にすればいい」
 千雪は静かに言った。
 苦々しい顔で京助は千雪を睨みつけた。
 京助の全てを拒絶するように歩いていく千雪の背中をじっと睨みつけたまま、京助はしばしそこに突っ立っていた。
 これ以上千雪に無理強いしたところで、ますます意固地になるだけだろうと、少しばかり時間を置けば、と、とりあえず車に戻ろうとした京助はその時、千雪の歩いていく方へ向かう男と擦れ違った。
男がちょっと振り返ったのも、頭は千雪のことで一杯で京助は気にも留めなかった。
 カレンのことは我ながら悔いていた。
 京助はそれでもまだ楽観視していた。


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