花のふる日は 114

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「今度はお前か。千客万来だな、今日は」
 京助の顔を見るなり、工藤はニヤニヤと笑う。
「千雪、お前、何してるんだ? こんなとこで!」
「何て、さっき電話で言うたやろ? 映画化のキャスティング確認せい、てことやから」
 プリンを食べながらのんびり返す千雪の言葉に、京助は舌打ちする。
「狭量な男だな? そんなに千雪が心配なら、千雪に四六時中べったり張り付いていればいいだろ?」
「できるもんならそうしてる!」
 工藤のからかいに、余裕もなく京助はまともに言い返す。
「いらっしゃい。もう、お風邪はよろしいんですの? こちらへどうぞ。このプリン、いただきものですけど、美味しゅうございますのよ」
 また紅茶とプリンを載せたトレーを手にゆったりと現れた鈴木さんが、きりきり苛立つばかりの京助を大テーブルへと招く。
「おかまいなく」
 柔らかな鈴木さんの笑顔には苛立ちをぶつけようもなく、仕方なく、京助はソファに腰を降ろす。
「まだ、終わらないのか?」
「終わった。このお茶美味しいわ。プリンも美味いで? そんな顔してんと、京助も食べたらええやん」
 仏頂面の京助を前に、千雪は暢気そうに紅茶を飲む。
「平造さんの桜、今年はまだ小さいけれど可愛い花を咲かせてましたわ。先週なんて、花びらが舞ってきれいでしたのよ」
 工藤の前にも新しく入れた紅茶を置くと、鈴木さんは窓から見える裏庭に目をやりながらしみじみと言った。
「いつの間にか、桜の季節も過ぎちゃいましたわねぇ」
 庭園灯に浮かび上がる桜の木は既に青々と葉をつけて、凛として立っている。
 夜の天空にはぽっかりと浮いた黄色い月が、人間たちの喧騒や思惑など関係はないとばかりに、涼しげな顔で見下ろしていた。
 
- end


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