花のふる日は 20

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 ちょうど軽井沢でロケがあり、工藤は翌日の朝ここに来る予定だった。
「……お客様ですか?」
 平造は工藤が助手席から眠っている千雪を降ろして、肩に担ぎ上げたのを見て怪訝そうな顔で尋ねた。
「ああ、酔い潰れてる。上の部屋、いいか?」
「はい、何か召し上がりますか?」
「いや、グラスと水、用意してくれ」
「わかりました」
 いつも工藤が使っている部屋へ千雪を運び、ベッドに降ろすと、コートやスニーカーを脱がせてやった。
 それでも起きる気配はない。
 起きれば水を飲ませようと思ったのだが、翌日には酔っている間のことはさっぱり忘れているという手合いだろう。
 平造が水とグラスを持ってくると、工藤はコートやジャケットを脱ぎ、ネクタイを外し、サイドボードからマイヤーズを取り出して飲み、ようやく息をつく。
 部屋を出るとき、平造が空調の温度をかなり上げていったが、やはりこの辺りはまだ真冬の寒さだ。
 部屋が広いだけ、温まるのも遅い。
 桜を見るのが嫌でここにきたはいいが、いくら酔っていたとはいえ、こんなところまで拾った男を連れてきたことを工藤は少し後悔した。
 モデルか何かだとしても社会人には見えない、おそらく学生あたりだろうとふんだが、もし仕事を持っていたりしてもあんな飲み方をする方が悪い。
 工藤は、バーで男とわかった時の自分の間抜け面を想像して苦笑いした。
 まあ、あの綾小路と別れて自棄になっていたってなところか。
 どこで拾ったか知らないが、てことは、堅気じゃない…? にしても擦れていなさそうだが…
 公衆の面前で二人の修羅場を目の当たりにしたことを工藤は思い出す。
 綾小路が強引にキスしていたようだし、どう考えてもあれは修羅場だった。
 あのタラシをあそこまでいれこませるとは、大したタマだ。ああ、男だったな……。


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