花のふる日は 44

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    ACT 6
 
 
 綾小路京助は時間が経つにつれて次第に焦りを感じ始めていた。
 少し時間を置けば、などとも考えはしたが、実際はあくる朝には千雪に連絡を取ろうとし、だがおそらく自分とわかれば携帯にも出ないだろうし、電源を切っている可能性も高いと思われた。
 たまたま研究室に来ていた佐久間を捕まえて、千雪に電話を入れさせてみたが、案の定電源を切っているらしく、とりあえず留守電に電話をくれるようにと佐久間にメッセージを入れさせ、千雪から連絡があったら知らせろ、と言っておいた。
 結局いてもたってもいられず、千雪のアパートに行ってみたのだが、返事がなく、鍵を開けて中に入ったが、千雪はいなかった。
 ひょっとして引越しなどは後回しで、原の家に早速行ってしまったのかもしれない。
 原に電話をしてみようかどうしようかと逡巡しているところへ、京助が席を置いているT大学法医学教室の富永教授から連絡が入り、すぐに司法解剖に立ち会うようにというお達しである。
 富永教授は監察医務院の監察医も兼務しているため、京助はその助手として司法解剖に立ち会うことが多い。
 撲殺死体から開放されたのは夕方になってからだった。
 佐久間に電話をしてみたが、千雪からは連絡がないと言う。
「あのやろう、一体どこにいるんだ!」
 イライラしながら、ようすを探るべく原に電話をかけた。
「あら、先日はお世話さまでした。ええ、まあ、お母様の? ええ、それはもう、いつでもお伺い申し上げますが……」
 電話に出たのは千雪の伯母だった。
 京助は母親に着物をあつらえたいなどと適当な話をしながら、千雪のようすを何とか伺おうと頭を巡らした。


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