花のふる日は 7

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 取材先の中東で戦渦に巻き込まれ、猛は命を落としたのだ。
 気丈に振舞う小夜子よりも父母が憔悴し、正子は一時寝込んでしまったほどだ。
「おお、お前、何か太ったな、トラ」
 千雪の座るソファにのっそり現れたトラ猫が飛び乗ると、ちゃっかり千雪の膝に納まった。
 続いてトラ猫より一回り細い、黒と白の柔らかい毛とグリーンの瞳が印象的な美猫が後を追うように飛び乗ると、静かに傍らにまるくなる。
「仲ええな、お前ら、相変わらず」
「やっぱり最初にお世話になった千雪ちゃんのことは特別なのかしら。この子たち、お客様には滅多に寄っていかないのよ」
 ポットにお茶を入れなおして戻ってきた小夜子が言った。
「ただ、俺がここにお邪魔する回数が多いからいうだけやない?」
 拾った仔猫をしばらく面倒見ていたものの、アパートでは飼えないということでこの家に預けたのだが、案外、家族の悲しみを和らげる緩衝材になっているのかもしれない。
「だから、いっそのこと越してきたらって言ってるじゃない。離れは独立してるから、執筆の妨げにもならないわ」
「そうよ、自由に使っていいのよ? ご飯はうちで食べればいいんだし」
 伯母も小夜子に同調する。
「そうやなぁ……」
 いつもそう言ってくれるあり難い思いやりを断り続けてきた千雪だが、ここにきてそれもいいかな、などと思えてきた。
「そうだぞ、千雪、何も遠慮することはない。ここはお前のうちも同然なんだからな」
 京助と距離を置くいい機会にもなるだろう。
 だが、その反面、今度はまた小夜子らに依存することになる可能性大だ。
 いつまでたってもそれでは成長がない。
 やはり、ここはどこか適当なアパートを見つけて引越しをするしかないか。


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