花のふる日は 99

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「やから、家のための結婚やもん。お陰でうちの店も持ち直したし、役目は果たしてもろたから、ええんよ」
「そんなこと言うてなかったやん、あの時」
「そうかて、ほんまのこと書いたら、千雪くん、うちのお父ちゃんに問い詰めたやろ?」
「あたりまえや。おっちゃん、何考えとんね!」
「ええんよ、うちが納得したんやし。彼はちゃんと役に立ったんやから」
「役に立ったてな、江美ちゃん。結婚てそんなもんと違うんやない?」
「ほな、いっそのこと二人今度こそ、一緒になったらええ!」
 しばらく、二人だけの世界を作り出している千雪と江美子を、周りは口を挟むことなく見守っていたが、島田が思わず口を挟んだ。
「そらええわ、あんな、浮気もんの婿さんなんか、もう放り出して」
「そうはいかん。お父ちゃんら、困るがな」
「ほな、いっそのこと駆け落ちしたらええ!」
「せやせや!」
 やんややんやと二人は皆に囃される。
「誰かてお前ら当然、一緒になると思うとったんやし、なあ」
「大体、千雪がとろいからこないなことになるんや」
 同級生らのありがた迷惑な突っ込みに、千雪は閉口する。
「そやなぁ、千雪くん、一緒に連れてってくれる?」
 江美子がそう言って笑う。
「おおお! 江美子からの誘いを、千雪、受け取らんわけやないやろ?」
 島田が千雪の背中をバンと叩く。
「よっしゃ、善は急げいうし、今から行くか?」
 千雪が立ち上がると、余計に周りが囃し立てる。
「うちも混ぜてよ、そんな、おもろい計画、除け者にせんといて」
 ドアが開かれたことにも気づかず、大騒ぎしていた面々は、振り返ってドア口に立つ芸妓の姿を認めて、また、おおおおおと口々に声を上げる。
「菊千代姉さん!」
「待ってました!」
 


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