氷花-05

– ACT 1

5

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「これやからな。俺、ほんま、先輩のこと心配ですねん。先輩も知ってはるやろ? 影で先輩がどない噂されとんのんか」
「ネクラだ、変人だ、クサそうだ? そんなん言われてる俺を合コンなんかに連れてってどないすんね」
「せやからです」
 ぐい、と顔を寄せて、佐久間は力説する。
「俺が上から下までコーディネイトします。そのボサボサの頭といい、野暮ったいその黒渕メガネといい、よれよれのジーパンといい、そのスニーカーならぬ運動靴といい、このジャケットならぬ鼠色のスエットといい、いくらなんでも、かまわなさ過ぎです。俺に任せてください、悪いようにはしませんよって」
「断る」
 即答する千雪に、佐久間ははああ、と大仰なため息をつく。
「何でです? 先輩かてええ年の男やし、アッチの方かて、一人では寂しいもんですやんか」
 ちょっと声を落として、佐久間はにやりと笑う。
「ここいらで彼女でもこさえて、あの、歩くだけで女が落ちるいう、京助先輩を見返してやりましょうよ」
 歩くだけで女が落ちる、そんなあきれはてた噂を千雪も耳にしたことはある。
「何であんなやつがそないええんや」
 思わず知らず口から悪態がこぼれる。
「そら、頭よし、ルックスよし、家柄よし、加えてあの豪胆さがたまらんのんと違いますか? 女からすれば、あわよくばセレブ婚、でなくても彼女、でなくてもセフレ、ってな具合で、並みのスターごときじゃ太刀打ちできない男ですやん。まあ、今までに京助先輩がつきおうた女も、そんじょそこいらの女と違いますしな、 スーパーモデルの何たらとか、何とか財閥のお嬢とか、五所乃尾流家元の娘とか」
 佐久間は調子にのって、千雪にとってあまり愉快なものではない言葉を並べ立てる。


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