真夜中の恋人106

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 思わず立ち止まって千雪は三田村の顔を覗きこむ。
「せやから、高校ん時からアイドルやって、女の子にきゃあきゃあ追い掛け回されよったから、それがトラウマになって、変装してんのやて」
「アホか。何がアイドルや」
「わかりやすいやろ? そうかてあの速水ってオッサン、お前が出てった後もしばらく呆然と、幽霊でも見たような顔してたからな」
 ただ、変装していただけのことなら、それでいいかもしれない。
 だが、問題は別のところにあるのだ。
 結局、三田村に押し切られて学食で定食を食べた後、コーヒーを持ってカフェテリアへ向かう。
 その間も、千雪を見た特に女子学生の反応が三田村を笑わせた。
「出た、ヘンタイジジィ」
「やだ、クサいのがきた」
「クサいセンセの横にいるの、またイケメン!」
 彼女らの言葉はコソコソという範疇を超えて、しっかり聞こえてくる。
「なるほど、こら、オモロいわ。やめられへんわけやな?」
 木陰のテーブルに陣取り、三田村は笑った。
「他人事や思て」
「まあ苦肉の策いうわけやな、弁慶もおらんし、わからんでもないけど?」
 したり顔で三田村はコーヒーを飲む。
「うるさいな、俺はひとりでやってるわ」

 


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