真夜中の恋人108

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 まだ警戒を解こうとしない京助を千雪はとりあえず三田村に紹介する。
「千雪がえろうお世話になっとるみたいですね」
 三田村は明らかに牽制するような眼差しを京助に向けた。
 桐島から、京助の話は聞いていた。
 気になったのは、すごく親しげだったという、そこのところだ。
 ここまでやってきたのは、その京助にも会ってみたいと思ったからだ。
 いったい、どう、親しいのだろう、と。
「フン、こいつは世話のしがいがあるからな」
 京助は三田村の牽制を鼻で笑って言い返した。
「おい、夕べ、速水のやつに聞いた。これで何も隠すことはないってわけだ」
 ボソリと京助が言った。
「今夜、部屋に行くからな」
 京助は千雪の肩にぽんと手を置くと、少し離れたテーブルにいる速水や文子、それに牧村のところへ戻っていった。
 速水の自分に向けられた視線は感じていたが、今日は絡んでくる気はないらしいのはありがたかった。
「千雪、あいつ、何、威張ってんね」
 京助の言葉に三田村は少しムッとしていた。
「お前ら、どういうおつきあいしてんのや?」
 真っ向から問われた千雪は一呼吸置いて三田村を見返した。
「どういうも、ないで? ほな、俺、授業あるから」
 ごまかしは効かない、三田村に気づかれたと千雪は思った。
 千雪は空の紙コップを持って立ち上がる。
「来週末、桐島のリサイタル、行くやろ? またチケット持ってくるわ」
 三田村は千雪の背中に向かって言った。
「ああ、わかった」
 人に知られて、後ろめたいなんて、好かん。
 京助はストレートに感情をぶつけてくる。
 でも俺がいてへんかったら、京助は文子やもっと他の女性に愛情を向けてたん違うやろか。
 何か、俺、ひょっとして、京助にとっては疫病神と違うか?
 ああ、ほんまに、こういう感情のモヤモヤが嫌なんや。
 千雪はひとり、どこにも持って行き場のない感情をもてあました。
 


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