真夜中の恋人109

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 ようやくレポートにも目処がついたので、部屋に帰ってベッドに横になっていたら、いつの間にか眠ってしまったらしい。
 電話の音で目が覚めた。
「………はい」
 しつこく鳴り響く電話のコール音に、やっと起き上がった千雪はひどく不機嫌な声を出した。
「千雪くんのお陰で、真犯人逮捕した」
 いつもに増して大きな声は渋谷だった。
 事件は急展開し、今朝ほどの千雪の下手な芝居に真犯人が食いついて、逮捕に至ったという。
「田辺の婚約者に張り付いてたらこの女、何かを例の証拠品が見つかったすぐ近くに捨てたんで、問い詰めたら簡単に全て吐きましたよ」
 女が持っていたのは血痕がついた巾着で、老婆のものだった。
 実は田辺が老女のところに通う以前、彼女が行っていた。
 だが、彼女はたまたまその巾着を見つけたので、老女は他の介護士に代えさせたというのだ。
 彼女はその巾着におよそ三百万が入っていたのを婚約者の田辺に話した。
 田辺は派遣センターで老女の担当に志願し、それを奪う機会を狙っていた。
 だが、いざそれを盗み出したと思った途端、眠っていたと思った老女が目を覚まし、大きな声を上げ始めたので、慌てた田辺はキッチンから包丁を持ってきて老女を刺し、孫の真山が忘れて行ったらしいジャケットがあったので、凶器の包丁をそれに包んで公園の植え込みに捨てた。
 それが真相だった。
 いかにも場当たり的な犯行だったにもかかわらず、たまたまそこにあった真山のジャケットが使われたことに、警察はミスリードされた。
 渋谷のように疑いをもって動くものがいなければ、危うく冤罪をつくるところだった。
 人間がやることだからミスもあるだろうけど、やはり捜査する側は気を引き締めてかからないと、と渋谷は言って切った。
 ともあれ、少しばかり千雪もほっとした。


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