真夜中の恋人11

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 三流小説だの何だの、散々こき下ろされたりするものの、別にそんなものは気にもかけない千雪だが、この男の口から出た言葉は許せない気がした。
「ええ、ではそういうことで」
 後ろにいる京助をジロリと睨みつけながら、千雪はその場を去ろうとした。
「ええ、そんなこと言わずに、たまには一緒に飲もうよ! 私としてはこないだの事件のことも聞きたいんだよね」
 京助より二学年上であり、年齢も一つ上になる牧村久美は、法医学教室の紅一点で、姉御肌のさっぱりとした気性の女性だ。
「そうでっせ? 大丈夫、千雪先輩は俺が絶対連れて行きますから」
 安請け合いをする佐久間の横から京助がすっと近づいてきた。
「ほんとにすまない。今夜は出なくていいぞ」
 京助はすまなそうに、耳元で囁く。
「誰が出るか」
 思った以上に千雪が怒っているのに、京助はフウと息をつく。
「だから、悪いってっだろ?」
「今夜は俺はダシで、大原さんとお前の焼けぼっくいに火をつけるのが周りの目的らしいで。お前のご学友とは言葉を交わす気にもなれへん」
「おい、佐久間が何を言ったか知らないが、俺と文子はとっくに……」
 京助は焦り、思わず声を上げる。
「お前と大原さん、似合いやで? うまくいくように応援してるわ」
「おい、千雪!」
 もどかしげにイラつく京助に、追い討ちをかけるようにはっきりそう言うと、千雪はその場をあとにした。


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