真夜中の恋人113

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 中学の頃、京都の家に遊びにきた小夜子とたまたま門の前で出会って以来、小夜子の美しさをほとんど崇拝していた三田村だが、未だにそれは変わらないらしい。
 小夜子は健気に仕事に打ち込んでいるようだが、いつぞや原の家に行った時は、無論まだ猛を失った傷は癒えていないという気がした。
 ただ、あまり外に出たがらないというようなことを、伯父が言っていた。
 しきりと千雪に一緒に住もうというのも、寂しさを紛らわしたいからかもしれない。
「ああ、そやな、これから話してみるけど一応、取っておいてくれるか?」
「わかった。で、お前のハニーの分はどうする?」
「はあ?」
「演奏会言うたら、可愛い恋人と一緒言うんが相場やろ? ひょっとして小野万里子とか?」
「冗談は休み休み言え」
 するとしばし間があった。
「フーン、そうか、やっぱ」
「当たり前や。小野万里子なんかと俺がどうかなるわけないやろ?」
「そうやない。わかった。しゃあないな、お前のごっつい恋人の分も用意しとくわ」
「え、ごっついて、お前………」
 何か言おうとした時には既に切れていた。
 完全に三田村の中では、京助はそういうポジションでインプットされたようだ。
 顔を上げると京助がエレベーターの前で千雪を睨みつけている。
 これで逃げ出したりしたら、京助は周りの目もお構いなく連れ戻しにかかるだろうとは、思いあがりでも何でもなく、容易に想像できた。
 ケージの中は二人だけだった。
「何でわざわざこんな高いホテルに来るんや」
「俺は別にラブホでも何でもよかったが、お前が嫌がるだろうと思ってな」


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