真夜中の恋人114

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 その切り返しに千雪はよけいムッとする。
 ドアを開けると横浜港を見渡す夜景が広がっていた。
 溜息をつきたくなるような贅をつくしたスイートルームである。
「せやから何でこないな部屋取るんや」
 ふと、金で釣ってやると言わんばかりの速水の言い草を思い出して吐き気がしそうになった。
「このクラスじゃ気に入らないってなら、もうちょい上の部屋に替えてもらうか?」
 上着を脱いでソファの背に引っ掛けると、京助は腰を降ろしてニヤリと笑う。
「誰がそないなこと言うた」
「突っ立ってねぇで座れよ」
 京助はくわえた煙草に火をつけながらソファをぽんぽんと叩く。
 ぼんやりリビングの入り口で立っていた千雪は、京助の横に座った。
「いいじゃねぇかよ、たまには息抜きしたって。俺の部屋じゃ嫌だって言うし、お前の部屋じゃ、隣近所に気ぃ使うしよ」
「どこが気ぃつこてるて?」
 千雪の部屋でも我が物顔でやりたい放題、とても京助が気をつかっているとは思えない。
「お前と俺が一緒の部屋にいるなんざ、誰にもわかりゃしねぇよ。俺とのことが後ろめたいってんなら、いくらでもカムフラージュしてやるさ」
 くわえ煙草の男がガキのように拗ねた口調で言い放つ。
「お前とのこと後ろめたいなんて誰が言うた?」
 声を昂ぶらせて千雪は京助を振り返った。
「男との関係なんざ人に知られたくはないさな。ましてや同級生やら身内やらなんかにな。真夜中の恋人なんてフザケた呼び名で俺との仲を邪推されたりしちゃ冗談じゃねえからな」
 


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