真夜中の恋人116

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 京都では甲斐性ないから、なし崩しにずるずると、また元の木阿弥になってしもたけど。
 千雪は自嘲し、京助とのことも本気で終わりにしよう、そう言い聞かせた。
 途端、胸の奥に鋭い痛みが走る。
 何や………
 心筋梗塞にはまだ早いんちゃうか?
「このままずるずると、おかしな関係続けていったかて、お互い何の得にもならん」
「言いたいことはそれだけか?」
 妙に落ち着いた言葉で、京助は言った。
 その時チャイムが鳴った。
 煙草を灰皿に押し付けると、京助はドアに向かった。
 やがて冷やしたワインやつまみが載ったワゴンを押して戻ってきた。
 ワインクーラーに入った二本の赤ワインのうち一本を開けると、京助は二つのグラスに注いでその一つを口に持っていった。
「お前も座って飲めよ。わりと美味いぜ?」
 皿に盛り付けられているのは、トマトやチーズなどが載ったカナッペ、黒オリーブの塩漬けやピクルス、キュウリや海草のマリネなど、どれも千雪が食べられるものばかりだ。
「最後の晩餐ってやつにしたいんだろ? お前は。だったら少しくらい余裕で楽しんだらどうだ?」
 京助に軽く投げかけられた言葉は、千雪の心を瞬時に凍りつかせた。
 千雪がそう望んだはずの成り行きだった。
 それでせいせいする、はずだった。
 面倒な感情のモヤモヤも消えてなくなる、はずだった。
 ところが今、頭が真っ白になって、心だけでなく思考も停止してしまった。
 ソファに腰を降ろし、ぎこちなく動く手がグラスを掴む。
 


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