真夜中の恋人120

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    Act 9

 夜景は窓一面、静かに広がっていた。
 煌く光の渦が少しずつゆっくりと形を変えていく。
 上等のワインもひとりでがぶ飲みしたって美味くはないな。
 グラスを持ったまま京助は窓の外から視線を戻す。
 カレンだったか、満知子だったか、理香だったか、いつ誰とこのホテルに来たのかなど忘れてしまった。
 いずれ遊びと割り切った相手とのラブアフェアで、ただ、相手の女が、ステキ、ステキ、と眼前の夜の光景にいたく感激していたことだけは覚えている。
 相手が喜んでくれれば、楽しく夜を過ごせるはずなのだが。
 ロマンチックなところもあるのね、京助も。
 そんな台詞を吐いたのは満知子だったろうか。
 いや別にそれはどうでもいい。
 何となくこの夜景を思い出して、ひょっとしたら千雪も喜んでくれはしないかと。
 そしたら少しでも千雪の機嫌がよくなりはしないかと。
 無駄だったようだな。
 女じゃないんだ。
 それに心を通わせたい相手なら、どんな風景もロマンチックにもなるだろうさ。
 ちっと舌打ちして、煙草をくわえて火をつける。
 近頃は煙草を吸う人間にとって住みにくくなっているし、吸い過ぎだと千雪にも言われて本数も減らしていたのだが、ここのところイライラと忙しさでついくわえていた。
「くそっ!!」


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