真夜中の恋人133

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 楽屋に向かう廊下で速水は言った。
「京助って男はガキの頃から、見かけで誰かを判断するとか、ないやつだった。高校の時に付き合ってた子は、チャーミングだが別にすごい美人ではなかった。たまたま、その子の親が東洋グループの社員だったために、やつの身内が栄転と称してヨーロッパに飛ばしたんだ」
「まあ、どういうこと?」
「やつには不釣合いな身分だとかって」
「ひどいわ、それ!」
「どこからかそのことがやつの耳に入っちまって……」
「ひょっとして、その身内を殴っちゃったとか?」
 速水は呆れて文子を見つめた。
「聞いたことあった?」
「いいえ、でもやりそうじゃない? 京助さんの行動パターンからすると」
 速水は畏れ入ってただ頷いた。
「残念ながらそこでその子とは終わってしまったが……。そんな京助に相手がついていけなかったのかもな。いや、言いたいのはそれだけじゃないんだ。つまり京助は見てくれで人を判断しないってことだ」
「それはわかるわ。でも小林さんて、近くで見ると可愛いのにね」
「可愛い……か。おそらく京助も付き合っててそう思ったんだろ」
 速水は思わず大きな溜息をついた。
「そうよ。かっこ悪さを強調したようなあの妙な風貌が異質過ぎるものだから、誰かが臭いだのオヤジだのと噂して広まって定着してしまったんだと思うけど、臭くなんてないし、どちらかというといつも清潔でいい匂いよ、彼」


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