真夜中の恋人136

back  next  top  Novels


 思わず速水と顔を合わせた文子は呟いた。
「私、ぼんやりしていて、席を立つ時に携帯を落としてしまったみたいで、今、探しにいってくれてるんです、千雪ちゃん」
 おっとりと口にする小夜子は、少しくせのある豊かな黒髪をふわりと垂らし、白いサテンのワンピースが清楚だが、白百合というよりゴージャスな白バラの雰囲気で本人は無意識のうちに周囲を圧倒していた。
「ああ、彼女、千雪の従姉。千雪の母親が小夜子さんの父親の妹で」
 文子と速水に京助が小夜子の説明が足りないところを一応フォロウした。
「あ、そうよ、原夏緒の恋人って確か名前が小林だったわ」
「小夜ねぇ、あったで、携帯」
 文子が思い出したことを口にしたのと、千雪が携帯を拾って戻ってきたのと同時だった。
 文子と速水を見てちょっと頭を下げた千雪のバツの悪さを覆い隠してくれたのは小夜子だった。
「あら、原夏緒をご存知ですの?」
「ええ、絵を見せていただいたのは回顧展の時、一度だけですけど、どれも温かくて素敵な絵でした」
「まあ、ありがとうございます」
「そういえば、昔小林くんちの居間に飾ってあったひまわりの絵、こないだはなかったよね?」
 桐島が会話に割って入った。
「ああ、俺、ほとんどこっちやし、母親が世話になっとった大学の先生とかに聞いて、親父が部屋を改造して絵を保存できるような倉庫にしたから、そこに置いてある」
「そうなん」
「展覧会はなさらないの?」


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です