真夜中の恋人140

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 文子は素直に喜んでいる。
「九条美術館なら、いいんじゃないか? あの建物、古いがなかなかの建築物だし」
 うんうんと、速水も頷く。
 千雪も海外の画家の展覧会で九条美術館には行ったことがあるが、もちろんそこでの展覧会ならば申し分はないのだが。
「ちょ、待て、そんな話初めて聞いたで?」
「そうだったか? だから兄貴が言ってただろ? 原夏緒の絵を持っている親戚がいるって。あれが九条の当主で、美術館の館長なんだ、名ばかりだがな。兄貴から話つけてもらったら大乗り気でさ。無論、スポンサーの話も東洋グループで話つけたみたいだぜ?」
 いつの間にそんなことになっていたのか、話はえらく大ごとになっている。
「せやから俺、何も聞いてないで」
「お前は別に何もしなくていいだろ。絵は近くなったら運ぶ手配するくらいで。三田村が原の小夜子さんとかと話して、着々と手はずは整いつつあるってとこだ」
「やから、お前も三田村も一言俺に相談くらいせぇよ!」
「だから言ってるだろ、今」
 千雪は溜息をつく。
 すべからくこれだ。
 今更、千雪が口を挟むような段階ではなくなっている。
「そういえば、小夜子さん、ご主人を亡くされたんですってね。私、存じ上げなくて、こないだはひとりではしゃいでしまって」


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