真夜中の恋人141

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 文子がすまなそうに口を挟んだ。
「あ、いえ、もう二年にもなるし、小夜ねぇも立ち直りつつあるんですけど。まあ、猛さんが亡くなって間もない頃から、どこかしらから縁談が持ち込まれるらしくて、最初は怒ってましたけど……」
「あたりまえだ。人の気持ちも考えねぇようなもん、突っ返してやりゃいいんだ」
 千雪の話に京助が怒りも顕に言い放つ。
「それが取引先とかやと断るにも厄介みたいで。今も結構、話あるらしいし」
「そうよねぇ、財界の消息通なら誰でも知ってるわ」
「彼女が?」
 溜息交じりに文子が言うのに、京助が聞き返す。
「だって老舗のご令嬢で、あの美貌だもの、当然よ」
「へえ。そういやあ、兄貴も彼女のこと知ってたな」
 興味がなさそうな返事を返す京助を速水が笑う。
「そういうやつだよ、お前は」
 やがて速水と文子はアメリカへ戻っていった。
 いざ二人がいなくなると、京助だけでなく、千雪も何となく面白みが欠けたような気分にはなったのだが。
「そういや、速水のヤツ、来年、うちの心理学教室に正式にくるらしいぜ」
「ウソやろ? 文子さんやのうて?」
「文子は向こうに残るみたいだ」
 ふうと一つ溜息をつき、何やら先が思いやられる気がする千雪だった。


              ――――――――――――― おわり


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