真夜中の恋人16

back  next  top  Novels


 今にも飛び掛かりそうな勢いで速水に睨みつけられ、千雪は少々困惑する。
「高校のクラスメイトってだけですよ」
「じゃあ、やっぱりそうなんだ? 世の中って狭いのね。恵美さんとは父の仕事の関係で結構前から知ってて、この冬、ニューヨークでリサイタルがあった時、彼女、ちょっと話してくれたのよね、高校の時に好きな人がいて、すごいきれいな名前の人でって」
 文子の言葉に、とうとう速水は席を立って千雪の傍にやってきた。
「まさか、だよな?」
「でも、小林千雪なんて、そんなにある名前じゃないもの。しかも男の方で」
 桐島恵美に告られたのは高二の夏だった。
 忘れたわけではないが、正直誰かと付き合う気にはなれないと断った。
 江美子や研二といることが大事だったのだ。
「うそっ! 名探偵にもそんな過去があったなんて!」
「しかも振った? 何で?」
 お蔭でみんなの冗談過ぎるといいたげな視線が千雪に集まった。
「先輩、そんな話、初耳でっせ? しかも、振った? 何でですの?」
 佐久間も興味津々かつ怒りさえ滲ませた目で千雪を凝視した。
「何で、あの桐島さんが選んだのが、名探偵なんだ?」
 よほど千雪に負けたような格好になったのが悔しかったのか、速水は千雪の前に仁王立ちになって詰め寄った。
「さあ、多分、探偵小説が好きだったんじゃないですか?」
 こいつ、佐久間よりもかなりウザったい。


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ