真夜中の恋人21

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 京助も千雪を気にしているようだったが、目が合っても千雪はプイッと逸らす。
 さっさとこの場から立ち去りたくて、同じ研究室の先輩に声をかけた。
「小川さん、俺はこの辺りで失礼させてもらいます」
「あ、ああ、そうか」
 小川はむしろほっとしたような顔をしている。
 研究室では、宮島教授以外はあまり親しくもない。
 というより、最初から研究室の面々からそう歓迎されていなかった。
 どうやらそれも、この風貌と噂かららしく、法の下の平等も怪しいものだと常々思う。
 見るからに奇異に映る風貌の男と見るからに立派そうな医者が仮に容疑者に上がった場合、大抵、奇異に映る風貌の男を怪しいと考えるだろう。
 これまで編集者にせよ研究室の面々にせよ、初対面ではおおよそ一歩引いて、いかにもこいつとこれから付き合っていくのが億劫だというような表情をされた。
 そういう相手とわざわざ親しくしたいとも思わない。
 編集者はいざとなれば電話だけでのやり取りでもいいし、楽なのだろう。
 そこへ行くと宮島教授やあの工藤は千雪に対して最初から何の先入観もなく、ごく普通に接していた。
 まあ、業界を渡り歩いてきた工藤にしてみれば、この程度のコスプレだ、ちょっとやそっとのことでは驚いたりしないのかも知れない。
 ああ、そう、よけい面白がって懐いてきたやつも二人ほどいるが。
「あっ、千雪先輩、こそこそフケようなんて思てはるんちゃいますやろ?」
 とろとろして厄介なやつに掴まった。
「まだ八時でっせ? 先輩、たまにはこういう付き合いもせんと」
「うるさいな、俺はこれから仕事や」
 取られた腕を振り放し、佐久間を押し戻した。


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