真夜中の恋人25

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 女性は踵を返し、オフィスを出る前に千雪を見ながら言った。
「その子、新しいモデル?」
 工藤は一瞬迷い、「……いや」とだけ言った。
「ああ、わかった、この子ね? 山ノ辺芽久から乗り換えたって子」
「ああ、まあ、そうだ」
 工藤の台詞にぎょっとして千雪は振り返る。
 ちょお待て! 何やねん、それは!!!
 口に出したいところをぐっと堪えて、工藤を睨みつける。
 女性はフフンと笑って出て行った。
「あ、おい、平!」
 工藤は電話に向かいかけて、何かを思いついたようで、女性を呼んだが、既に階下に降りてしまったらしい。
「こんばんは」
 そこへまたひとり、美人が現れた。
 あれっと思って、千雪が手元の女性誌を見ると、表紙を飾っている女優だった。
「万里子、ちょっと、平に用があるから待ってろ」
 慌てて工藤はオフィスを出て行った。
「なあに? 平さん、またタレントさんのごり押し?」
 入れ替わるように入ってきた万里子と呼ばれた美人が鈴木さんに確かめるように言った。
「ほほほ、さあ……。今、お紅茶入れますね、万里子さん」
「ありがとう」
 千雪が少し感心したのは、鈴木さんだ。
 何があっても動じない、常に穏やかそうに見える。
 と、今度は万里子と目が合った。
「こんばんは、小野万里子です。あなた、新しいモデルさん? 女優さん?」


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