真夜中の恋人30

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 京助が身体を浮かせたので、千雪は何とか這い出そうとして足蹴りして暴れた。
 ところがその足をぐいと掴むと、京助はくるりと千雪をうつぶせにしてしまう。
「この、酔っ払い! 離せ!」
 京助にとってはおあつらえ向きに、シャワーを浴びたばかりの千雪はTシャツとパンツ一丁だ。
「ヤツら勝手なことを言いやがって! いいか、文子となんか大昔の話で、今さらどうこうなるわけ、これっぽっちもねぇんだ!」
 怒りの勢いに任せて、京助は千雪に押し入った。
「う……あ……」
 一瞬身体を硬直させた千雪だが、京助のことを聞いてきた文子の言葉がふいに頭をよぎり、途端、熱く血液が一気に逆流する。
 やから……京助の女を妬いてるみたいな、こんなの……いやや……
 胸の奥で黒々しく蠢いている感情を必死で否定する。
 酒のせいで凶暴性を帯びた京助の行為に、千雪は抗う気力もなくなって声を上げる。
 二件目に入ったパブでは、京助は誰が何を言っていたかも覚えていないくらいイラつきながらやたら酒を煽っていた。
 今度こそ千雪が離れていってしまうのではないかという不安につき動かされ、店を出るなり速水の誘いを突っぱねてここにきた。
 京助にしてみれば、実際、昔の女とくっつけようなんぞという周りの目論見など、腹立たしいばかりなのだ。
 できるものなら千雪は俺のものだと公言してしまいたいところだが、そんなことをしようものなら、逆に千雪は怒って逃げ出すに違いない。


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