真夜中の恋人33

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 平造はそのことについてそれ以上何も言わなかった。
 だが、工藤はまだ引きずっているという宮島教授の話からすると、桜木ちゆきという人物が工藤と何らかの関わりがある、そして教授はそんな工藤を心配しているというように思える。
 宮島教授は他人の過去を掘り返すようなことを面白半分にやるような人ではない。
 調べてみるといいと、あえて自分から話さなかったのは、教授自身それを話すことがいいのかどうか、迷いがあるのかも知れない。
 だが、桜木ちゆきという人と工藤との関わり、そして今、同じちゆきという名前を持つ自分と工藤との奇妙な関わりに、教授は何か思うところがあるのだろう。
 もし、工藤とそのちゆきさんと何らかの関わりがあるとしたら、工藤が小説の映画化を持ち出したその理由は、ただ、名前に興味があったというだけのことなのかもしれない。
 何となくちょっと拍子抜けや。
 いや、工藤に対して、結構えらそうにしてしもたけど、ほんまはそんな理由やったとか……
 評論家の先生方には、こき下ろされたしな、………まあ、どうせたかが探偵小説や。
「おーや、名探偵、調べ物ですか? 次の小説のネタ探しとか?」
 いや、こいつだけには好き勝手なこと言わせたままにはしておかない!
 こっそり自嘲していた千雪だが、その声は聞いただけでついついカッときてしまう。
 よりによって、顔を見たくもない相手とどうしてこんなところで出くわしてしまうのか。
「ええ、一応、雑誌で連載なんかやってるんで、色々忙しいんです」
 振り返ると速水とその後ろには文子が立っていた。
「まあ、連載? 何ていう雑誌ですか?」


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