真夜中の恋人34

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 にこやかに尋ねられて、千雪は一瞬言葉を捜す。
「軽いミステリー雑誌です。失礼します」
「そりゃ、楽しみだな~、名探偵」
 眼鏡越しにジロリと速水を睨みつけてその横を通り過ぎるが、あまり効果はなかったようだ。
 それにしても、あの才色兼備な文子と京助をくっつけようという速水の判断は正しいのではないか、と千雪はぼんやり考える。
 京助と言えば、今朝、狭いベッドの上で圧し掛かるようにして眠っていた京助の下から這い出し、そのまま蹴り落としてやったのを思い出して、また腹が立つ。
 夕べは京助がワインや材料を持参して、夕食に作ってくれたビーフシチュウもワインも美味かったのはよかったのだが、結局ベッドに引っ張られ、お陰で身体はガタガタ、一限目からあった講義にもようやく間に合った。
 でも、シャワーを浴びて出てくると、いつものように京助がスクランブルエッグとトマトのオープンサンドや、コーヒーを用意してくれていて。
 きっと俺は、そんな風にこの先京助がかまってくれなくなることが嫌で、文子や京助の女とかいわれる存在がうっとおしいて思うんや。
 文子を見るたびに、モヤモヤする自分の気持ちをあらためて考えてみる。
 これは俺の我侭や。
 京助とよう噂されてた華道家元の娘とか、見るからに遊びや思うけど、文子さんて、ほんまに非の打ち所がないやん。
 第一、京助が何で俺にそこまで執着するんか、ちっともわからん。


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